マウスピース矯正(例えばインビザラインなど)は「痛みが少ない矯正方法」として人気があります。
しかし、全く痛みがないわけではありません。新しいマウスピースに交換した直後や歯を移動させるタイミングで、圧迫感・歯のズキズキ感・粘膜の刺激・顎のだるさなどを感じる方もいます。
本記事では、なぜ痛みが出るのか(原因)を整理し、痛みを和らげる具体的な対処法、マウスピース矯正時にやってはいけないこと、さらにはワイヤー矯正との痛みの違いについて解説します。
これから矯正治療を始めたい方、不安を感じている方の参考になれば嬉しいです。
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マウスピース矯正のメリット・デメリットについては、こちらの記事をご覧ください。
マウスピース矯正が痛い原因
マウスピース矯正でも痛みや違和感を感じることがあります。以下に主な原因を挙げ、それぞれについて解説します。
歯が動いているから(歯根膜・骨が応答しているから)

Set of MRI scanner slices of dental part of adult human male scull with multiple problems on white background.
矯正治療では、歯に一定の力を加えて少しずつ移動させます。マウスピース型矯正でも、アライナー(矯正用マウスピース)を交換することで次の歯の移動ステップへ移ります。
新しいマウスピースを最初に装着したとき、歯は「今までなかった方向へ押される力」にさらされるため、圧迫感や鈍い痛みを感じることがあります。これは、歯根膜が引っ張られたり縮んだりする刺激に由来します。
この痛みには、骨と歯が反応してリモデリング(骨の吸収・再形成)が起こる過程も関わります。つまり、この反応があるからこそ歯が実際に動くわけで、完全に痛みをゼロにするのは難しい面があります。
一般的に、痛みのピークはマウスピースを装着してから 2〜3日後 とされ、その後徐々に和らいでいく傾向があります。多くの場合は1週間程度で落ち着くことが多いです。
新しいマウスピース(アライナー)に慣れていないから
マウスピース矯正では、一般的に1〜2週間ごとに新しいアライナーに交換します。新しいアライナーが前のものと微妙に形が異なるため、歯にかかる圧力パターンが変わります。これが「慣れない刺激」として痛み・違和感を感じる要因になります。
また、交換直後の装着具合が不十分だったり、浮きがあったりすると、局所に過度な力がかかってしまい痛みを感じやすくなります。
アタッチメントやマウスピース端部が粘膜に当たっているから
マウスピース矯正では、歯に力をかけるために白い樹脂素材の「アタッチメント(付与箇所)」を設けるケースがあります。
これがマウスピースと干渉して口内粘膜(頬、舌裏、歯茎)を刺激することがあります。特にマウスピース端部の角・バリ(わずかな出っ張り)が粘膜に擦れたり、当たったりして痛みや口内炎を誘発することもあります。
また、歯茎の腫れや粘膜の炎症があると、通常より敏感になっていて、小さな刺激でも痛みを感じやすい状態になっていることがあります。
顎間ゴムや補助装置で引っ張られているから
マウスピース矯正に併用して「顎間ゴム(ゴムかけ)」を使う場合があります。これにより、上下の顎を引っ張る力がかかるため、顎の筋肉や関節、歯列部分に負荷が生じて、だるさや痛みを感じることがあります。
特に、顎関節や周囲の筋肉が敏感な方は、顎の開閉時に違和感や痛みを覚えることもあります。
後戻り(歯が元に戻ろうとする動き)が起きているから
マウスピースを外している時間が長かったり、装着時間が不十分だったりすると、歯が少しずつ元の位置に戻ろうとする「後戻り」が起きやすくなります。後戻りした状態で新しいマウスピースを装着すると、予定外の力がかかり、痛みが強く出ることがあります。
また、噛み合わせが微妙にずれてしまっている状態で装着すると、一部の歯に過負荷がかかることがあり、その歯に痛みを感じることがあります。
マウスピース矯正が痛いときの対処法
痛みを完全にゼロにすることは難しいですが、適切に対処すれば症状を和らげ、日常生活への負担を軽くできます。以下は、実践しやすい対処法です。
1)鎮痛薬(痛み止め)を服用する

痛みが強いときは、一般的な鎮痛薬(市販薬)を服用することが選択肢のひとつです。例えばイブプロフェン(ロキソニンなど)やアセトアミノフェン系の薬が過去の報告で使われています。
ただし、以下の点に注意してください。
- 用量・服用間隔は添付文書または医師・薬剤師の指示に従う
- 胃腸が弱い人、他の薬を服用している人、アレルギーのある人は事前に医師・薬剤師に相談
- 長期的・頻繁な使用は避ける(痛みが続く場合は原因を確認することが必要)
- 鎮痛薬の中には、歯の動きを妨げる作用を持つものもあります。服用量が多すぎると、治療の進行に影響することもあるため注意が必要です。
痛み止めはあくまで「応急処置」であり、痛みの根本原因を解消するものではありません。痛みが長期化する場合は、歯科医師に相談すべきです。
2)硬い食べ物を避け、柔らかい食事にする
痛みがあるときは、噛むときに刺激が加わる硬い食材(おせんべい、ステーキ、ナッツ類など)は避け、柔らかいもの(おかゆ、スープ、豆腐、ゼリー、茶碗蒸しなど)を中心にすると楽になります。
また、食事時以外はマウスピースを長時間外さないようにして、装着時間を確保することも大事です(後戻り防止の意味も含めて)。
3)マウスピースの尖り・出っ張りを調整(削る/滑らかにする)
マウスピースの端部に鋭い部分やバリ(微細な出っ張り)があると、それが粘膜に当たって痛みを引き起こすことがあります。こうした部分を歯科医院で滑らかに調整してもらうことで、痛みを軽減できることがあります。
ただし、自分で勝手に削るのは避けたほうがいいです(形状が変わってしまい、矯正力に影響を及ぼす可能性があるため)。必ず歯科医師に相談して調整してもらいましょう。
4)一つ前のマウスピースを使う/戻すことを相談する
痛みが強すぎて次のアライナーに抵抗がある場合は、歯科医師と相談の上、一つ前のマウスピースに戻す、もしくはその間使う期間を延ばすなどの調整をしてもらうケースがあります。これにより急激な力変化を和らげて、症状を軽くすることが期待できます。
ただし、この対応はすべてのケースで可能とは限らず、治療計画全体とのバランスを見て判断されます。必ず担当医に相談してください。
5)患部を冷やして炎症を抑える/冷たいドリンクを含む
痛みや腫れ感があるときは、冷たいタオルや保冷剤などで頬や付近をやさしく冷やす方法も有効とされます。炎症を抑えることで、痛みを和らげる手助けになります。
ただし、冷やしすぎると血流が悪くなる可能性があるため、冷やす時間や強さには注意が必要です。あくまで「冷やしすぎない程度に/短時間」行うことが望ましいとの見解もあります。
6)歯茎や粘膜をマッサージする・温める(注意が必要)
軽い痛み・張り感がある場合、歯茎や口腔内の周辺をやさしくマッサージすることで血行を促し、痛みの緩和に寄与することがあります。
ただし、炎症が強い、腫れている、出血があるといった状態では刺激を避けるべきです。また、温める方法は諸説あり、過度に温めると逆効果になる可能性もあるため、使用には注意が必要です。
7)痛みが長引く/強い場合は歯科医師に相談する
以下のような状況がある場合は、自己対処に頼らず、速やかに歯科医師に相談すべきです。
- 痛みが 1〜2週間を超えても和らがない
- 痛みの度合いが激烈で、日常生活に支障が出る
- 顎の開閉時に音がする、引っかかる感じがする
- 粘膜のただれ、出血、腫れが悪化している
- マウスピースを装着できない/装着位置が合わない
- 顎関節痛や頭痛・肩こりなどが併発している
矯正治療は個人差が大きく、無理な力をかけ続けると歯根や歯槽骨にダメージを与える可能性もあります。早めの相談で計画の修正や装置の調整を図ることで、痛みを抑えつつ治療を継続できることがあります。
マウスピース矯正が痛いときのNG行為
痛みがあると焦って対処したくなりますが、以下は避けるべき行動です。
1)マウスピースを長時間/無断で外すこと
痛いからといってマウスピースを長時間外したり、指示以上に外したままにしたりすると、歯が後戻りしやすくなります。その結果、次回装着時に不適合な力がかかって痛みが強く出る可能性があります。
また、装着時間が極端に短くなることで治療の効果が落ち、治療期間の延長につながることもあります。
2)痛みのある箇所に自己刺激を加える(強く押す、こすりすぎる)
痛む部位を過度に触ったり、強めにマッサージしたりすることは、粘膜を傷つけたり炎症を悪化させたりする恐れがあります。特に口内炎のような症状がある場合は刺激を避けるべきです。
3)鎮痛薬を規定以上に頻繁に・大量に服用する
痛み止めは便利ですが、自己判断で頻回・大量に服用するのは危険です。胃腸障害、肝機能・腎機能への負担、薬物相互作用などのリスクがあります。
また、鎮痛薬には歯の動きを阻害する作用があります。医師・薬剤師の指示を守りましょう。
4)マウスピースを無断で削る・改造する
痛みの原因と思われる部分を、自分の判断でヤスリやハサミで削ることは避けましょう。矯正力の設計が崩れてしまい、治療計画が狂ったり、歯の移動精度が悪くなったり、逆に痛みを増すリスクがあります。
5)痛みがあるといって無闇に装置を放置(調整せずに放っておく)
「痛いから無視して慣れないまま放置する」という選択肢はリスクがあります。痛みが装置や設計上のズレ・微調整不良から来ている場合、それを放っておくと症状が悪化したり、粘膜損傷・炎症を引き起こしたりする可能性があります。
必ず歯科医師への相談を優先すべきです。
マウスピース矯正とワイヤー矯正はどちらが痛い?
矯正治療中の痛みは2つに大別されます。
1、歯が動くことによる痛み
2、装置が頬や舌などに当たる痛み
これらの痛みは治療ステージごとにマウスピースやワイヤーを新品に交換した時に起こりやすいです。装置を交換して “2〜3日” をピークに痛みが生じることが多く、1週間程度で落ち着きます。
痛みはマウスピースでもワイヤーでも起こり、個人の感受性に左右されます。痛い人はマウスピースもワイヤーも痛い、痛くない人はどちらも痛くないので、どちらが痛いか?と問われると“その人次第”と言わざるを得ません。
歯列矯正を検討している方は、神戸市須磨区ののぶ歯科・歯ならび歯科にご相談ください
マウスピース矯正は「比較的痛みが少ない矯正法」として支持されていますが、痛みや違和感をまったく感じないとは限りません。特にマウスピース交換直後や歯を動かす段階では、多少の圧迫感・痛みを感じることは自然な反応です。
しかし、適切な対処(痛み止め、柔らかい食事、装置調整、冷やす、適切な装着時間維持など)を行えば、痛みを最小限に抑えて治療を進めることが十分に可能です。また、痛みが強い・長期化する場合や、顎に異常感がある場合は、早めに担当の歯科医師に相談し、治療計画の見直しや装置の調整をお願いすることが大切です。
もし、あなたが 神戸市須磨区付近 にお住まいで、マウスピース矯正を検討中あるいは不安を感じていらっしゃるなら、のぶ歯科・歯ならび歯科 にご相談ください。
当院では矯正無料相談を実施しており、痛みや期間などの不安にも丁寧にお応えしています。一度お気軽にお問い合わせください。

